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130386Raのスタートアップな日々

京都で働くstartupサポーター

半沢直樹

日曜劇場の『半沢直樹』が大人気だ。確かに、「倍返しだー!」という台詞は爽快だ。自分はもう、8年以上も前に銀行を辞めているのだがやっぱりよく聞かれるのでちょっと自分の知っている範囲で書いておこうと思う。

 

「国税におかまっているの?」

LOVEリンこと片岡愛之助演じる彼のことを言っているのだが、当然おかまの国税査察官には、会ったことがない。但し、査察に来る国税の調査官はおしなべてあんな態度でやってくる。銀行が国税に来るのは、任意調査と査察の大きく2つに大別される。任意調査は文字通り「よろしければ、教えて欲しいのですが?」という感じなのであそこまで厳しくないし、ターゲットを定めている訳ではない。だから、銀行の方も手馴れた担当者なら、まず任意調査ですねと念押しをする。

だが、査察となると話は別だ。ドラマのように朝一番で開店前にやって来る。そして、すべての机やロッカーに封印を張っていき、許可するまで電話も外出も駄目と言われる。さらに許可するまで身動きするなと言われる。それを知らずに開店準備をしようとしていた新入行員が、女性査察官に『だるまさんが転んだ』の如く「あなた、動くなって言ってるでしょ!」と恫喝されたのを目の当たりにしたことがある。

 

「上司に責任擦り付けられたりするの?」

通常は、判子を押した人間には皆責任が掛かる。故にあんなに一融資課長が大きく責任を問われることはないと思う。しかし、割りとリアルなのは「裁量臨店」。これはひょっとすると銀行によって名称が違うのかもしれない。確か、私の旧出身銀行では貸考(貸出考査)と呼ばれていた。本部から臨店に来て、貸出の稟議や書類、管理状況などをチェックしていた。やはり、ロスや事故があれば注意が必要な検査だった。タイトルの質問だが、私は、基本的には人を嵌めるほども、嵌められるほども偉くなかったので分からない。トカゲの尻尾きりというのは、どこに行ってもある話では?その程度しか正直知らない。割りと人間的な上司が多かったので、経験がなかっただけかも知れない。まあはしごを外されるくらいなら、何度も経験したがドラマのような酷いケースは経験がない。

 

「倍返しだー!って言ってました?」

当然、そんなの言ったことありません。言えてたら辞めてなかったかな。まあもう一つ言うと、倍で返してもらう必要がないので。あくまで、銀行って元本と利息を“キッチリ”払ってもらうところ。それ以上は必要ない。ただ、ちょっと真面目な話で言うとここまで金利が低いと当然に銀行の利幅って少なくなる。それは、お金をかしても、預けても一緒なので利幅が薄ければ安全に多く貸すことしか考えられなくなる。今の銀行が、ベンチャーや中小企業のリスキーな案件にお金を出したがらないのはそういう理由だ。だからと言って、そう言った案件にお金を出さなければ世の中がよくならない。本来大銀行たるもの、『世の中をよくして自分達が儲ける。』そんな気概が欲しいところだが・・・。

 

半沢直樹が何故受けるのか?

やはり6割程度のリアリティーと、たぶん多くの銀行員(ヒエラルキー社会と言う意味ではサラリーマンも同じか)がこんな風にできたらいいな、こんな世界があればいいな、が繰り広げられていてそこが視聴者を惹きつけるのだろうと思う。

リアリティーという意味でいけば、冒頭に半沢直樹が町工場の技術力に注目して融資を行うシーンが出てくる。あれは、少なくとも過去には現実的にあった話だ。そういう年に1回かあるかないかの自分でも納得出来るような話を実現するために頑張っていたように思う。自分は、そういったロマンが持てずに銀行を辞めたが、今も同じ志で頑張っている人たちも残っている。

 

片道切符の出向についても、聞かれる。そんなに絶望的なものかと。しかし、銀行員にとってはたぶんそうだろう。銀行員というのは、ある種の特殊な仕事で残念ながらあまりそのまま使える技能というのはあまりない。描かれている出向先は、グループ企業とかではないので、取引先として能力だけは大きく期待されるが、政治的な思惑があり本心では歓迎されないケースが多い。特にエリートとして期待に応えてきた人間がそういったところに行くのは辛いことだろう。

 

そんな環境で頑張っている人に言えるのは、辛抱しきれなくなったら『倍返しだー!』って辞めてみれば?ってことかな。その気になれば銀行員の特殊能力が必要なベンチャー企業、中小企業はけっこうあって、そんな気概を持った人材はけっこう貴重だったりするのだから。

 

そうそう、銀行のそういうドロドロとしたのをもっと知りたい人には、こちらをお勧めします。

金融腐蝕列島(上): 1 (角川文庫)